空(中観)の世界認識をベースに吃音者の身体感覚を童話風のショート映像として制作












































「ぼくらはうたをことばにする」
ぼくはぼくの
からだがきらいだ
ぼくは時々
新しい発見をする
駐車場の砂利の中に
考えられないくらいの円い石を見つけたり
雨上がりの電線から垂れる水滴の中に
小さな氷の結晶を見つけたり
いまもぼくは
みんなが当たり前に通り過ぎている
その小さな名無しの星に
まだだれも聞いたことのないような
素晴らしい名前を思いついた
そしてそれを
この大発見大発明を
そうだよ
いま目の前にいるあのこに伝えようとしたその時に
ぼくのからだは
いつものようにいじわるをする
ぼくのからだは
悪い人をひとりも逃がさない牢獄みたいに
高い高い塀をこしらえて
どんな怪盗でも開けられない
強くて頑丈な鍵をかける
そして
その素晴らしい星の名を
暗い暗い
檻のなかに閉じ込めてしまう
暗い暗い檻のなかで
時間は外の何倍もの速さで過ぎるんだ
だからその素晴らしい星の名は
その牢獄の中で少しずつ
少しずつその身を腐らせていく
暗い暗い檻のなかで星の名は
新鮮な
若葉のようなインスピレーションで
弾けるようにして生まれた
その時の自分のことも
少しずつ忘れていく
そしてそれから
どのくらいの時間が経ったのだろう
気分屋な牢獄は
ふいにその錠を外し
門を開く
そしてその時に
閉じ込められていた星の名は
よろめき
ふらつき
おぼつかない足どりで
ふらりと出てくる
そこには
あれほど輝いていた星の名の姿はもうなくて
干からびて
もう誰にも見向きもされない
くすんだ色の星の名が立っている
一陣の突風が吹く
干からびて
からだの軽くなった星の名は
ふらふらと空に舞い上がり
風に吹かれて飛んでいく
干からびて
自由になって
意味を失くして
軽くなった星の名は
海の上を飛んでいく
白くきれいな渡り鳥たちと一緒に
潮風に流れて飛んでゆき
途中恐ろしいハゲタカに
つつかれそうになったりしながら
旅をする
意味を失くした星の名は
空を旅するその間
だんだん自分も鳥に似てくる
鳥に似てきた星の名は
自分で飛べるようにもなってくる
それで案外星の名も
なんだか気持ちよくなっちゃって
ぐんぐんぐんぐん速さを上げてく
あんまり速さに夢中になって
星の名は
自分が今どこにいるかも
わからなくなる
そして自分が
鳥のようであったことも
すてきな星の名だったことも
忘れてく
星の名は
地球のそとに
宇宙のそとに
時間の外まで飛び出して
そしてすぐに
形を失くす
形を失くした星の名は
その時はっと
気づいてしまう
自分がほんとははじめから
どこにでもいけたことに
何にでもなれたことに
形を失くした星の名は
その何もないところで
ちょっとだけ泣く
ちょっとだけ泣いて星の名は
そしてそれからくるりと一回転
形をなくした星の名は
飛んでいく
またぐんぐんぐんぐんとスピードあげて
もやもやとしたその場所に
飛び込んでいく
そこにはあの時間が
春の残り香のように残っている
大発明したすてきな星の名を
檻のなかに入れられて
それでもどうにか星の名を
助け出そうとからだをよじり
鍵を探してからだをふるわす
真っ赤な顔のぼくがいる
星の名は
色んなことを忘れていたけど
なんだかちょっと気になって
なんだかちょっと面白そうで
ぼくの口のなかに
ぐわっと入る
ぐわっと入った星の名は
ぼくのからだに入ってく
からだに入った星の名は
不思議な懐かしさを感じていたんだ
昔星の名だった星の名は
ぼくのからだのなかのなか
いま
しゅるんとかたちを変える
昔星の名だった星の名は
こんどはあたらしいうたになる
あたらしいうたになった星の名は
こんどはするりと
ぼくの口から出てきたよ
昔すてきな星の名だったあたらしいうたは
ぼくの目の前で
ずうっと心配そうにぼくを見ている
あの子の顔をゆるませて
こんどはあのこのくちからも
またべつの
あたらしい歌がとびだしてくる
ぼくらはうたを
ことばにする
ぼくらはうたを
ことばにする
【DireCreative short courseを受講して】
最初は何を作るかすら決まっていない状態で参加しました。テーマもアウトプット方法も未定で、とにかく何かを形にしたいという段階です。
クラスでは、まずマインドマップで自分の興味や思考を広げ、その中から軸になる要素を見つけていきます。
自分の場合は仏教の“空”や“中観”という考え方に惹かれていたため、最初はそれをテーマにしたアート映像を作ろうとしていました。
しかしコラージュに入り、テーマを別角度から見てみることで新たな視点が生まれます。
「今の自分が本当に作りたいものは何か?」を何度も問い直すことになりました。
その結果、抽象的なアート作品ではなく、ストーリー性のある映像を作りたい、自分自身の体験(吃音)をベースにした方がテーマが活きる、という方向に大きく転換しました。
チューターとの意見交換も経て最終的には「吃音という身体感覚をメタファーで表現する物語作品」「自分のドローイングを使ったアニメーション」「童話のようなビジュアルテイスト」という具体的な制作方針まで決まりました。
一人で考えていた時はここまで整理できず止まっていましたが、クラスのプロセスとフィードバックによって曖昧な興味から具体的な作品プランまで落とし込めたのが大きかったです。
山田健一 - 映像サッカ
Instagram:@sukoichi7